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思索・人形・エンジニアリング

球体関節人形の型抜き用の型を3Dプリンターで印刷する

背景

球体関節人形を作り始めて暫く経過しましたが、今まで造形のベースとして発泡スチロールを使用していました。しかし、発泡スチロールで削る段階で5~7mm程度の粘土を盛った状態の造形を考慮して発泡スチロールを的確に削ることが苦手で、胴体が部厚すぎたりすると後から補修する際に穴になってしまうことが多い等苦労していました。

そこで、PCで造形を行い、3Dプリンターで印刷した型を用いて型抜きをすることを思いついたので、その過程をまとめた次第です。3Dプリンターで印刷した造形物をそのまま肉体として使用される方も多いのですが、僕は粘土+ジェッソ+油絵の具の質感が好きなので、あくまで型として使用してみます。

また、一度油粘土で原型を作成してから型を作成する場合に比べても、大まかな造形がPC上でのモデリングで行えるため、調整を繰り返す際に盛ったり削ったりすることで消費する粘土の量が削減できたり、原型からのプロポーションの変化を事前にデータとして行うことができます。

型抜きの経験がないゆえに甘い部分がありますが、やっていきます。

型の分厚さを検証する

以前から発泡スチロールの代替物としてフィラメント(3Dプリンターで使用する素材)を用いてベースを印刷し、そこに粘土を巻く方法での製作を行っていたのですが、その際300Wの電気コンロで粘土を乾かすタイミングでフィラメントが溶けて歪むことが頻繁に起こりました。フィラメントは約200℃で溶ける為当然なのですが、型抜きの際には歪むことで簡単に剥がせる可能性があります。

そこで、粘土を盛りつける際のやりやすさと剝がしやすさを検証するために、分厚さを変えた3種類の型を用意します。ここでは、フィラメント1周0.4mmの厚さを1~3周した腰部分のパーツを印刷しました。

※型の内側ではなく外側に粘土を盛っていますが、結果には影響しません。

 

粘土の盛りやすさとしては、1周の場合触っただけでも柔らかさを感じられる為、盛り付ける際に強く押し付けると歪んでしまう為使い勝手が良くありませんでした。2,3周の場合はそれぞれ触ってみた時の硬さには違いがあるのですが、盛り付ける際にはほぼ歪むことがなく、どちらでも問題ありませんでした。

今回熱して歪みで剥がすことを前提として電気コンロで暫く熱していたのですが、表面に粘土があったこともあり、厚みごとに20~40分ほど時間がかかりました。ただ、直接熱した場合は2周したものでも5分程度でも溶けた為、大差ありませんでした。結論、0.8~1.2mm程度の分厚さがあれば十分なように感じます。この辺りは使用するフィラメントによっても変化がある為、消費量の節約も考慮しつつ試してみると良いかもしれません。

3Dデータの作成

モデリングソフトを使用して、型を作成します。ソフトは3Dプリンターで印刷できる任意の形式で問題ありませんが、僕はBlenderで作成したものをstl形式で出力しています。造形についてはYouTubeやブログ等で作成方法をまとめている方がいるので、それを見つつ気合で作りましょう。

造形が完了したら、半身を作成→Mirrorで補完→Subdivision Surfaceで表面を滑らかにする→Solidifyで0.8mmの厚みを持たせる→前後で分割することで、印刷用の形状になります。事前に厚みを持たせてしまうと形状を整えるのが難しく、プロポーショナル編集を使用した際に場所ごとの厚みが変わってしまう為、最後にSolidifyを適用すると良いです。

 

印刷する

僕はAnyCubic Cobraという3Dプリンターを使用しています。3Dモデルをstlデータ形式で出力したのち、Curaというスライサーソフトで出力したモデルを取り込みます。印刷設定は環境にかなり依存する為、色々と試してみてください。

設定値が決まったら、前後共に印刷します。

 

粘土の盛り付け

普段は造形用の粘土としてラドールを使用しているのですが、最終的な硬度を求めて、今回はプルミエを使用しました。個人的には柔らかくて造形が難しいように感じます(フラグ)。両面に粘土を盛りつけて、ドベを塗ったら電気コンロを使う前に一日程度乾かしてみます。

 

圧着してしばらく放置したら、電気コンロで熱しつつ剥がしてみます。概ね形はできていたので更に熱して乾かしたのですが、プルミエが痩せやすいこともあり、ドベでの圧着部分が痩せて隙間になってしまっていました。やわらかい状態での圧着だとうまく圧力がかからないようなので、一度前後のパーツを開いた状態で乾かして硬くなったうえで圧着した方が良さそうです(フラグ回収)。

 

また、剥がす際にフィラメントと粘土が強く張り付いてしまうと剥がすのに力が必要で、熱して歪ませないといけない問題がありました。型も軽量なので再利用を検討しなければ毎回歪ませても良いのですが、一般的な型抜きと同様にベビーパウダーを塗布する方法も検証してみました。

結果としては、あまり力もいらず剥がすことができた為、ベビーパウダーは効果的だったようです。また、粘土の痩せ方として強く盛り付けるとフィラメントと粘土の隙間ができないのですが、ベビーパウダーを塗布しておくとある程度強く盛り付けても隙間ができるような痩せ方をするようです。

 

ということで、いい感じの胴体を上記の手順で錬成できました。勿論ここから調整が入ったり指や顔の顔の細かい造形は別途必要になりますが、全体的なプロポーションはデータ上で解決できる為、かなり良さそうです。

余談

タイトルにはとても悩みました。今回の方法が適用可能な対象は主に石塑粘土での造形なので球体関節を持つ人形に限らず、現代創作人形等呼称を考えたのですが、素材に対応する名称を的確に当てはめることができませんでした。その為、石塑粘土での造形が一般的でありアクセスする際のとっかかりとなりやすい球体関節人形をタイトルにしています。