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情報工学科の授業は教養ですらないのに落ちこぼれて申し訳ないという話

3年前にこの記事が少し話題になっていたので,少し振り返ってみようかなと思います.

情報(工学)科の授業は教養ですらないという話 – 慶應義塾大学編 | KCS::Computer Society

この投稿で,以下の不満が述べられています.一応文章のつながりを理解する為に全部読むと参考になるかと思います.

  • 講義1つ1つが軽く、深いレベルの理解につながるような手を動かす課題を出す講義が非常に少ない
  • カリキュラム全体に統一感が無く、情報科学の中でも通信に偏っている
  • 同期に情報技術に取り組んできた人がとても少ない

これらの不満(指摘)については同意した上で,読者によって賛否が分かれるのではないかと思います.僕は個々の問題はあれど全体としては情報工学科に進んで良かったと思っています.

TL;DR

  • 慶應義塾大学情報工学科の講義は分野のインデックスを知る程度のものである.
  • それほど意識が高くない人には丁度良いレベルかもしれない.
  • プログラミング専門学校ではない.

自分について

高校時代は情報科学・工学についての知識はなく,どちらかといえばSNS利用における問題など技術の利用方法に関する活動を行なっていました.初めてプログラムを書いたのは学部2年生の情報工学科に進学した後の講義で,C言語の単位を落としました.

あまり真面目な人間ではないので,学問の理解に励むことをせずボウっと過ごしていました.

慶應義塾大学情報工学科の講義は分野のインデックスを知る程度のものである.

学問を修める上で最低限やった方が良いこととして,分野のインデックスを知ることがあると考えています.得られた知識それ自体は何十年も潰しが効くわけではなく,分野の流行り廃りもあります.その為,基本的な知識をつけておいて,深く学ぶ際にそれらを元にすることで効率的に学習を行える準備をする,くらいの話です.知の高速道路を脳内に再生産するわけです.

深く学ぶことができないことは日本の大学の講義という性質もあるかと思います.真面目な学生は多いですが意識の高い学生は意外と少なく,前提知識を高くすることができません.また,学部の講義である程度深いレベルまで理解させるには,ついてくる学生を一定数確保しなければいけません.初歩的なC言語の講義で単位を落とすような人間がいる程度なので,難しいことができないのかもしれません.僕は学部2年生時点では結構苦労していて,3年生になって分野全体を見渡せるようになってから少しずつ追いついてきた感じがします*1

 

その上で,やはりカリキュラムや講義の内容がおざなりになっているとは思います.基本的な講義の感想については先に紹介した記事に同意します.そう言うと全てに同意すると思われるので,代表的なものを引用します.

また、講義を受けるための必修科目(prerequisites)、という概念がなくどの講義も事前知識を仮定されてないためか、例えばフーリエ変換OSI参照モデルを別々の講義で複数回やり、カリキュラムの構成に違和感がありました。

ネットワーク工学の講義を3,4回受け,その全てでパケットの話を聞きました.

 

 

そんな感じで,カリキュラムの構成が微妙と言う話はあります.これについて,情報工学科進学直後だと理解することができません.

 

研究機関なので文句を言うな

それほど意識が高くない人には丁度良いレベルかもしれない.

遅くなりましたが,言葉の定義を最低限しておきます.「意識が高い人」は自主的に学習を行う人間として,特に大学進学前からその分野に興味を持ち自学している人とします.「真面目な人」は与えられたものを吸収する為に勉強に励むことができる人で,元々その分野に詳しくなくとも最終的に知識を体得できる人とします.

こう考えたときに,前者の人からすると前提知識もなく深く勉強するわけでもない情報工学科の講義に不満を覚えるのはとても納得できます.大学の進学に限らず何かを勧める媒体は基本的に良いことしか述べませんが,こういったマッチングの失敗について特に言及しないのは大学側の問題かと思います.

しかし,元々知識のない真面目な人にとってはある程度インデックスが揃っているのでまぁ悪くないと思います.(というのは嘘で,指摘の通り詳しくない教員が担当する分野があったり分野によって学習できるタイミングが異なったり,割と悪いですね.)

多分,追いつくのが精一杯の落ちこぼれの人間に合わせた講義なんだろうと解釈しています.ここらへんは特に異論が多い気がするので叩かれポイントです.

突然ですが,少し前の経験の話をします.この前学科分け説明会で学部1年生と高校3年生が数十人きてそれぞれと軽くお話をしました.僕は人工知能機械学習インタラクティブエージェント)に関する研究室に所属しているので,情報工学についての話に加えて人工知能について少し質問をしました.回答として,人工知能についてはイメージすら湧いていない,情報分野についてもインデックスは貼られておらず,プログラミングやりたい!くらいのイメージの人もいました.すでにプログラミングについて知識がある人はほぼいませんでした.別にこれに関してネガティブな感想はないですが,情報工学科に進んだ後に周りに知識のある人間が全然いないというのは感覚的に正しいらしいです.

プログラミング専門学校ではない.

Abstract: Yes.

一応学習の過程でプログラミングを行う必要がある場面はありますが,プログラミングを教えてくれる場面は少ないです.ここ最近Pythonの演習が登場したらしいですが,今まではCとJavaの講義のみでした.それについてもプログラミングの学習(特にアプリケーションの作成を目指したもの)ではなく,前者は計算機の仕組みの理解を前提としたポインタや配列などの初歩的な説明,Javaソフトウェア工学の理解を建前としたものだった気がします.その他は自分で勉強してねという感じで,プログラミングの能力の習得は自分でやる必要がありそうです.

因みに学部4年生で研究室に進んだ後はプログラムを自作する場面が割とあります.機械学習の学習プログラムを書いたり,対人実験用インタフェースを作成したり,ネットワークの諸々を弄ったり,やることは無限に出てきます,しかし,それほどプログラミングの能力が高くない状態で研究室に入る人は結構います.僕もギリギリそちら側に分類されると思います.

ただ,そこで求められる知識は人によっても異なるしそれこそ無限に深くなるので,そういう面でも講義に求めすぎず自分で勉強する必要があると思います.真面目な人には物足りず,不真面目な人には負担が大きいですが,まぁ僕に合ったより良いものがないので妥協するくらいの意識の低さが僕にあるので,納得しています.

まとめ

TL;DRに同じ.

 

 

 

*1:本当に申し訳ない…