人間のあるべき姿の探索

思索・人形・エンジニアリング

人形展を見に行きました

先日横浜人形の家に行ってきました.常設展示に加えて,二つの企画展が開催されていました.

www.doll-museum.jp

アンティークドール×現代創作人形」と「人形作家・田中流の眼差し」共に人形の熱量にあてられてとても疲れてしまうくらい刺激を受けました.

前者は10/10,後者は10/31までやっているので是非皆さん行ってみてください…!

 

人形の家自体は半年ほど前にも一度行ったことがあり,常設展示はその時にじっくり見ていました.世界の人形や日本の昔のもの,リカちゃん人形といった風に様々な人形が展示されていてとても素敵なので是非見てみてください.僕は早く企画展を見たい!と思いスルーしてしまったのでまたの機会にもう一度ちゃんと見たいです.

アンティークドール×現代創作人形」はアンティークと現代のドールあるいは人形が横に並べられる形で展示されていて,その歴史が描かれた垂れ幕を眺めつつ歩く感じです.アンティークドールの方は結構発見が多く,現代の粘土製の人形は触れ合うのに適さないのに対して胴体のみ布製にしたり,ビスクが流行っていた時代は子供にも流通していたらしいという話も書かれていて驚きました.

現代創作人形は恋月姫さんをはじめてとして様々な方の作品が並んでいましたが,基本的にはサイズとその細かさに圧倒されていました.これはロボット関係でもよくあることですが,140cm近くになると”人”としての存在感がとても強くなりますね.血管の描かれた足首の関節とか爪とか,自分も頑張らなきゃな…という気持ちになりました.

特に印象的だったものとして,顰めっ面や歯を食いしばるような表情の子がいて,微笑みだけではない強い感情の発露を人形の表情で表しているのはとても良かったです.加えて手でも感情や子供らしさまで表現されていて,以前の人形や仏像にあった表情が最高潮に達する前の曖昧さで止めることで最高潮を想像させるのではなく,ストレートに表現してしまう痛快さがありました.

「人形作家・田中流の眼差し」はTwitterの方で作家さんの宣伝をよく見ていたので,作品自体はなんとなく把握していました.作品が一つの見渡せる空間に並べられると共に,田中流さんの写真及び作家の紹介の垂れ幕が会場内に配置されていて,とにかく人形に囲まれていました.現代の作品は特にそうというか作家さんの他の作品も知っているからか,”その人の個性”や”熱量”をとても感じました.量産されるようなキャストドールは一般受けというかみんなに愛される分のっぺりした印象を受けますが,創作人形は一人の人間の視線をがっちり掴んでいくような力強さがあり,それを一度に眺めてしまったので結構疲れました.また,写真としての魅力に関しても学びというか,拘りを感じました.うちにも三人くらい球体関節の子と上半身だけの子とちっちゃい子がいますが,人形だけではなく,写す角度や光の当て方,”彼や彼女が何を見ているか”を想像させるような工夫が必要で,更には背景まで含めてそれが生きている(あるいは単にいる)世界を切り取っているんだなと思いました(小学生並の感想ですが…)

 

見終わった後は売店でポストカードと写真集を購入して同行者と感想を述べていたんですが,お互いに「早く帰って人形を作らなきゃ…」という気持ちになっていました.また,以前教室で一人作りあげてから家で練習として二人くらい作りつつ次に作る子を考えているような状態だったんですが,何となくオーソドックスな子を作ろうかなと思いました.

そもそもの動機としてロボットみたいな動くものが好きで,ロボットではある程度開発や研究が進みつつある内部機構とその動作設計に加えて,人形の美しい肌で包みたいというのがありました.アンドロイドとして有名なジェミノイドが近くで動いているのを見る機会が割とありますが,シリコンの実際にいそうな人間らしさより,理想像を追い求めたかったんですね.

しかし,自分で作りながら創作人形を見る中で,もちろん斬新な発想から魅力的な身体構造の人形もいる中である意味では普通の形の子がとても魅力的であるのを見て,普通の身体の中に魅力を見出せるような子を作りたいと思うようになってきました.なので,動かすのはまだ先になりそうです.あるいは来世になるかもしれないですね…

 

完全に余談ですが,60cmサイズくらいの子だと動かすのも結構大変で,安価でかつ静音かつ小さいモータがなかなか見つからず,自作には難儀して以前一度諦めました.サイズや動作としては良さそうな研究開発用のロボットでSotaという子が20万円くらいで売っているんですが,もちろん分解は禁止されているので,現代で20万円の価値があるロボットの内部機構を自作するのは素人には結構難しいですね.動作設計は比較的慣れている方なので肉体があれば良いのに…一方で瞼だけとか首だけ動かすとかはやられている方もいるので,時代が追いつくまでは最小限の動きでうまく魅力を出せると嬉しいですね(Artificial Subtle Expressionの話かもしれないですね)

 

更なる余談として,作家さんの経歴が書かれているのを見た時に美大出身などではなく一般の学部卒だったのを発見してしまったり,普通に会社勤めで働かれている中で人形製作をされている方がいることを知ってしまったので,言い訳していられないですね.やっていきましょう…