人間のあるべき姿の探索

思索・人形・エンジニアリング

就業以降の雑記

労働者になったので労働をしています。

 

労働が始まる直前まで家で粘土をこねる生活をしていたところからその時間の多くが労働に置き換わりました。日々の時間は短くなりましたが、時間があるのをいいことにただ漫然と手を動かしていた気もするので時間のなさに焦りつつ終業後に手を動かしていく、というのはある意味でよい生活かもしれないですね。

金銭的な面でも、以前は半年と少し異常労働生活をしていた分の貯金を切り崩していましたが、今は安定した収入のおかげで本でジェンガをしたり3Dプリンタが増殖したり、少しずつ余裕が出てきました。

3Dプリンタは以前中古で2万円のものを所持していたのですが、サイズ的にも精度的にも大きな問題がありました。そこで5万円のものに変えたところ想定していたものがおおむね出力できるようになり満足しています。自動で高さを調節する機能や土台になるプレートを温める機能(とても便利)などがついています。あとはソフトウェアの機能ですが印刷設定で造形物を支えるサポートの設定や印刷速度の細かい条件設定などの工夫で割と綺麗に出力できるようになりました。目的の一つだったサーボブラケットなどロボットの機構関連のパーツを出すには十分な精度が出せます。

というわけで、フリーのサイトから人形の顔を出力して粘土を張り付ける作業をしてみました。正直なところ価値観の変化があり、ある程度の技術は自動化されうる段階に来ているという実感が目の前の造形物によって表面化しました。私は人形制作において大まかな造形が苦手で、図面を引いても発泡スチロールを削ったり粘土をまく段階で結構ずれが生じてしまうことが大きな課題で、その後の造形で「想定した造形」にもっていくのに時間がかかっていました。そもそも人間の造形への理解が足りていないというのもありますが…(逆に一度「正解の造形」を見たら自分が作っているものとの差異に気づけた面はあるので、立体での正解と自分の作成したものを比較するとよいですね)

それが原型をプリンタで出力できるようになったことで、一度モデリングができれば0.5~1mm程度の厚みを調整する細かい造形に注力できるのでかなり進歩があった出来事になりました。粘土を貼ってジェッソ塗って油絵の具で塗装…まで述べ12時間程度で割と良い顔ができました。

ただ、アイデア的にやりたかったことは今まで少しずつ消化しており、さらに技術的な課題も解決しつつあることで、自分がやりたいことが何か迷っている、というのが正直なところです。現在は数年前からの目標でもあったモータでの駆動を目指して数十年ぶりにBlenderを触っていますが、最終的には自分で人体のモデリングもできないといけないのでしばらく粘土を触らずパソコンを触る期間にしてもよいかもしれないです。ちなみにモータでの駆動自体は依然やったことがありますが、サーボブラケットを無理やり粘土で固定していたり、造形に納得のいかないまま動作方面の概念実証を実証したり、甘い部分がありました。因みに人の顔の位置を検出してそちらを向きます。

youtu.be

 

しばらくパソコンをカタカタしつつ美しいものを作れたらとは思いますが、コンクールとかそういうのを目指すのは今の人生ではやらなくてもよいかなという気持ちになっています。自分にとって美しいものを作りたい動機でクオリティを上げるのであれば人に見られる機会は欲しいですが、自分の欲求と世間の欲求が一致するのも稀で、そこの説得をしたいわけでもないなと思いました。これは大学院で研究に対して思っていたこととも同じですね。被らないように、新しいものをという努力自体はやっていきたいですが、世間に対して示すというよりは自分が作りたい欲求を満たすためなので、それ自体は必須ではないのかなと。それどころか完成したものよりも作るプロセス、より詳細には下地塗装を重ねながら筆の跡が残らないように気を付けたり、粘土をこねて表面を整えたりしている時の没入して時が過ぎていくこと、であったり、その存在に考えるといった人形の存在の周辺のことをしている時が楽しいので、何ができてもうれしいのかもしれません。

それはそうと私はほかの人が自分の作りたかったイメージを実現させていたら悔しいよりも自分で作らなくてよくなった安心感の方が強いです。世界に存在してくれてありがとう…と思うだけなので。そうでないパターンは”手元に”存在してほしい場合ですね。生身の人間の恋人とかは自分との関係性で立ち現れる概念なので世界に人が存在しているだけでは実現不可能、みたいなことですね。

あと命名がへたくそで俺から生まれたから俺太郎みたいな名づけをしがちですが、人形が生まれた時点で実存決定太郎であるのは何となく違和感があるというか被造物であることをまざまざと見せつけられてつらいので、善くあってほしいみたいな将来的な願望を込めて善子のような名づけができたらなと思います。

 

話は変わりますが、ライチ光クラブを読みました。恣意的に情報を操作して内容を伝えると、人工知能ロボットが感情を手に入れて活躍する作品で、美しさの概念をインプットするのは難しいとか、関係性によって成立する概念とか結構Human-Robot Interaction分野に触れた人間としても面白いと思う内容でした。全然関係ないんですが、BLはいいぞ。全然関係ないんですが。

 

無生物が動いたり動かなかったりすると…嬉しい!