人間のあるべき姿の探索

思索・人形・エンジニアリング

機構設計のサイズ感の話

人形になるぞ!

godiva-frappuccino.hatenablog.com

 ということで人形に機構を仕込んで動かせるようにしています。そこで、設計するにあたっての話をします。

 今回は等身大のトルソーを作る為、かなりサイズの大きいものとなっており、造形も大味になっていきます。粘土が重くて片手では人形を持ち上げられず、倒したら背後にあるものが壊れる、そんなサイズ感になります。存在感を出すためにはこのサイズと思ったものの、作業量が尋常ではありません。その代わり、造形をする際に脂肪がついていそうな分だけ粘土をもぎ取って貼り付けるとそれっぽくなったり、等身大であるメリットもありました。

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 一方で、機構はかなり細かい調整が必要です。例えばサーボモータのマウントを作成するとき、サーボモータの長辺は42mm程です。そして、その前後に丸く穴が開いており、ここにネジを通して固定する部品を作成したのですが、この穴が1.0mmずれると、ネジがまっすぐ入らなくなります。更に、ネジの太さは3.0mmなのですが、3Dプリンタで印刷をする段階で、この穴は少し、感覚的には0.2mmほど縮みます(僕が使用しているプリンタの精度が0.3mmです)。そうするとネジが入らなくなる為、3.3~3.6mm大きく穴を開けます。更に、印刷の方向によっては穴が少し歪んでつぶれる為、3.8mm程にします。3Dプリンタの精度の方がボトルネックになるように、0.2mm単位でのモデリングが求められます。とは言っても、拡大して観察しながら0.2mmこの辺を右に移動…みたいな操作の繰り返しでできるのですが。

 しかし、3Dプリンタの精度は0.3mmといえど印刷の条件やノイズによって少し歪みます。毎回0.1mm単位ではズレが生じますし、真円を描こうとしたのに全体にずれが発生して段差ができてしまうことがあります。それを考慮して、少し大きめに穴を開けたうえでセロテープを2,3周巻いて隙間を埋めたり、ダイヤモンドやすりでひたすら部品を削って0.1mmくらい拡張したりします。セロテープの厚みを実感します。

 粘土の外骨格との干渉もかなり問題になります。モデリング時は胴体の厚みを10mm程度つけた状態でプレビューしていたのですが、内部の機構が干渉します。最終形は色付けした部分が前方に10mmほど余裕がある様に見えるのですが、実際にはこの機構全体を取り外ししてメンテナンスするため、はめ込む際の導線を開けておく必要があります。背中部分も下手に大きくすると、背中の蓋が閉まらなくなるといった問題で、5mm程機構を小さくする、モータをうまく収める、干渉しないよう印刷して動作確認するといったことを繰り返します。

 下図は背中に機構を仕込んだ様子ですが、背中パーツの金属がモータと干渉したり、肩周りもギリギリまで広げないとモータが干渉したり、特に突出部はぶつからないよう実際のモノを見て確認する必要がありました。深夜作業も多かったので、夜モデリングして次の日に印刷してみてみてるとうまくいかない、みたいなこともしばしばありました。

 普段テレビなどを見ていてミリ単位の作業と聞くとすごい!と思いますが、実際には0.2mm隙間があるだけでパーツがぐらついてしまいますし、そういった細かさに対応する集中力が求められるのだなと思いました。そして、そういう意味では3Dプリンタの精度は案外信用ならないと思いました。勿論、フリーハンドで造形するよりは信用できますが、、、

 大きなサイズ感にも、小さなサイズ感にも対応していきたいですね。