人間のあるべき姿の探索

思索・人形・エンジニアリング

首機構ができるまでの話

人形になるぞ!

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 人形に機構を仕込んで動かす試みをする中で、首を3自由度で動かす為の試行錯誤をしていました。最終的には人体でいうところの胸鎖乳突筋に近い形の筋肉を首筋に二本リンク機構で用意したうえで、車軸関節に見立てたモータを配置して3つのモータを連携させて動かすことで人間の首の動作を模倣しました。

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 しかし、その途中で様々な失敗がありました。折角なので振り返っていきます。そもそも、最初は2自由度の機構で首をかしげる動作を諦めていました。パンチルト機構で調べると登場する形ですが、これはモータの動きをそのまま首の動きに使用しており、振り向き方向と頷き方向それぞれにモータの軸を配置します。この場合、回転の中心にモータの軸を配置することで、2つまでは安定して配置することができます。しかし、満足できず、試行錯誤を繰り返していました。なんだかんだしっかり作りこみました。

 一年前に作成したこの子と同じ機構です。

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 とはいえ、早々に胸鎖乳突筋のイメージが脳内にあったので、再現するための機構を探っていました。下にモータを二つ配置して、リンク機構で首関節の中心を引っ張る形にしていました。最初は首の中心部分を球体を差し込む形にしていました。そして、下の部分は単純なリンク機構でまっすぐ引っ張る形にしていました。

 ここで二つ罠があります。まず、機構の素材となるPLAフィラメントの強度の問題がありました。頭部1kgほどを支えながら頻繁に動かす為、それなりの強度が求められるのですが、機構の一点に力がかかってしまう問題があり、結構頻繁に折れていました。そして、もう一つの問題が球体関節を考えるときに遭遇した2自由度リンク機構のゆがみ問題です。首をかしげる方向に動かすと右図の黄色の線のように平行方向の距離が短くなります。これによって、モータ側の黄緑色の可動部と黄色いリンクの接点の角度が変わります。つまり、2自由度分動くジョイントを用意する必要があります。更に、首周辺は球体の為、逆に3自由度分動いてしまい動きがぶれる問題がありました。

 ということで、ユニバーサルジョイントという2自由度のジョイントを購入してはめ込みました。前後左右に回転するけれどねじれはしない、といった感じの機構になります。これを首の中心部、リンクの上端及び下端の計5か所に設置します。あまり高いものではないこともあり少し遊びがある為頭部が少し揺れるのですが、それについては改善点ということで一旦合格としました。このユニバーサルジョイントはネジを差し込めるので、写真をよく見るとねじ止めしているのがわかります。

 モデルはこんな感じです。

 ということで、基本的な機構ができました!あとは細かい話として、モータは基本ねじ止めしているのですが、ねじ止めの穴が一ミリずれた状態で印刷してしまってやりなおし…みたいなこともありました。最初に穴がない状態でモデリングして後から黄色い棒を差し込んで差分をとって穴をあけるのですが、モータのモデルが微妙にずれていたり、うまくいくように見えて実際印刷すると隙間がカツカツだったり、印刷の過程でフィラメントが歪んで楕円形になってネジが刺さらない問題などもありました。単純な印刷というより設計段階での考慮も必要でしたね。

 あとは、ねじを差し込む場合実際にはドライバーでねじ込む必要があるので、ドライバーを通す隙間が必要です。下図の右側は最初支柱とネジ穴が少しかぶさってしまいナットを指で固定できなかった状態です。左側のように支柱の位置を変えることで解決しましたが、この辺りの数ミリの調整で背中の粘土の壁にぶつかるかどうかの瀬戸際でモデリングしていたので、かなり胴体の有機的な形との戦いでした。のどぼとけの辺りに6mmの太いねじを差し込む必要があったのですが、丁度首の支柱があったため、支柱の真ん中にでかいドライバーを通すための穴を開ける必要もありました。

 そういった試行錯誤を経て動くようになりました。結局、最終的な感性物の10倍くらいは試行錯誤で印刷したため、フィラメント代も結構なものになりました。ただ、そういうプロセスを踏まないとできないものだということも理解しました。大変ですね。