人間のあるべき姿の探索

思索・人形・エンジニアリング

球体関節をモータで動かす:外骨格にモータを仕込む

人形になるぞ!

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 人形における球体関節について考えました。そこで、球体関節の中にモータを仕込む方法を考えます。

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 まず、球体関節は3自由度確保できる仕組みであり、球体関節人形は球体の魅力に利便性も相まって使用されています。本来肘関節のような部分は球体である必要はありませんが、制約を加えて自由度を下げることで球体で各関節を表現することできます。

 しかし、基本的にその関節を動かす場合は人間がポーズを決めて手動で動かします。そして、動かした後は内部でゴム紐などで強く引っ張られることで姿勢を維持します。愚直にモータを三つ配置する方法の難しさとして、サイズの制約が一つ大きな課題があります。一般的な成人の首の直径を測ると、10~12cm程になるかと思います。そして、そのサイズを支えられるサーボモータのサイズは一番長い辺で4.2cm程になります。更に、モータは角ばっている為、完全な球体の中に3つ仕込むことは困難になります。とはいっても、首の下の方にスペースがある為、そこに他の関節用のモータを仕込む必要がなければ仕込むことが可能です。

上の図から球体に直接モータをつけることが難しそうだと判明したため、球体を引っ張る仕組みを考えます。そこで利用できるアイデアがリンク機構です。リンク機構では四つ以上の棒の一辺を固定するイメージをして、その対辺を動かすイメージをします。この固定される辺の一方の単点を球体の中心に配置することで、リンク機構の動きが球体の回転運動に変換されます。そして、それを2自由度にそのまま拡張できます。最後に、もう一つの自由度を足すために外部からモータで回転を与えることで3自由度の動作が可能になります。最後の1自由度に関してはリンク機構を使用する必要性はなく、一つだけであればサーボモータを球体関節に収めることも可能ではないでしょうか。

ここで注意点があります。2自由度を構成する場合に、リンク機構の形が歪みます。図示した方が早いのですが、片方の軸が動いて地面とは並行ではなくなった場合に、球体上の単点が地面と平行方向の軸で見たときに近づきます。もう片方の接点(モータに接続される部分)が固定されていると、リンク機構の可動部は地面に対して垂直ではなくなり、他の辺との接点も斜めになります。要するに、ここの接続も2自由度の機構が必要になります。

この制約を考慮して最終的に作成したのが以下の形です。

 大量に例を調べる中で、この論文の図が参考になりました。細かい仕組みは置いておくとして、この図一枚で仕組みをリバースエンジニアリングする結果となりました。他にも様々な形式があったのですが、パーツを3Dプリントできる必要があり、制御としても簡単である必要があったため、この形に落ち着きました。また、リンク機構の接点にはユニバーサルジョイントという2自由度の機構を配置しました。

https://www.semanticscholar.org/paper/Facial-expression-on-robot-SHFR-III-based-on-Ke-Yang/bc8b4ee297c9112a3cef62768cbbe3e14165c709/figure/2

余談ですが、球体関節と人間の首関節は構造が異なります。これによる困難として、トルクの確保と安定性の確保がありました。実際の人間は車軸関節が首の後ろ側にある為、軸とリンク機構の距離が確保できており、これをそのままモータに置換できれば良いのですが、球体関節は図示するように距離が短いため、モータの少しの動きが全体にも影響するため、遊びがあるとそれだけ頭部が揺れやすくなってしまう課題が残っています。また、球体関節ではリンク機構が平行四辺形でないと球面を滑る動きが作れなくなってしまいます。本当はサーボモータにつながる辺を短くすることでより強いトルクを確保できるのですが、そういった事情によりサーボモータ自体のパワーに頼る必要がありました。

そういった考察を経て、今の形になっています。