人間のあるべき姿の探索

思索・人形・エンジニアリング

解体ショーを見た話

この前の週末にお出かけした際、解体ショーを見たのでその話です。

元々私は寿司が好きで食べるのも好きですが、寿司にマイクロビキニを着せる部活に入っていて休日や仕事の後の時間などにマイクロビキニを着せるならどの寿司ネタが良いか検討しています。最近ではアノマロカリ寿司マイクロビキニ部という分科会が発足し、マイクロビキニアノマロカリスの寿司に着せることの是非について一人で議論しています。

そんなこんなで繁華街で考え事をしながら歩いているとお寿司屋さんが目の前にありました。繁華街なので勿論いろんなお寿司屋さんがあること自体は特段驚くことではないのですが、「解体ショー」というはしがきがメニュー表の上に書かれていました。おなかがすいていたのもありましたが、寿司について新しいインスピレーションを得られるのではないかと思い、そのお寿司屋さんに入りました。

店内は少し大きめの普通の回転寿司ですが、一角に魚を置く台と即席の観客席があり、まばらではありますが人が座っていました。私も友人と共に椅子に座り待っていると、寿司職人らしい服装をした若い女性が台の前に立ち、お辞儀をしました。台の下から2,3つの箱を置き、それぞれの箱から包丁を取り出しました。包丁には刻印がされていて、その中には「平野」「アナポール」などと書かれていました。個人的には包丁は日本で作られた和の製品のイメージがあったので、海外製の包丁が使用されているのかと少し驚きました。

ただ、解体するためのネタがまだ来ていません。もうしばらく待つと、台の上で解体の準備を終えた女性が店の裏へと消えていき、ガラガラと台車を押しながら戻ってきました。台車の上には黒いポリ袋に包まれた大きな物体が置かれていて、これだけの大物を捌く様子が生で見られるのはとてもラッキーだと思いました。しかし、そのポリ袋の中から現れたのは魚ではなく、縄で縛られてぐったりとした男性でした。

途端に店内の雰囲気がガラッと変わり、勿論私も戸惑いました。それとは対照的に女性は覚悟の決まった顔で包丁を手に持ちます。女性は演説じみた口調で「今から私は、彼氏を解体します」と言い放ち、その男性に刃をあてます。女性はそのまま刃を食い込ませ、滑らかに男性を捌いていきました。息をのむ迫真のショーだった為、私は困惑しながらも食い入るように眺めていました。30分ほど経ち、男性は三枚おろしになっていました。そこでさらに驚いたのですが、三枚おろしになった男性の3つの部分はそれぞれが立ち上がり、女性と並んだかと思えば全員でお辞儀をして店の奥に消えていったのです。

店に入ったからには寿司を食べずに帰るのも失礼と思い、そのまま寿司を食べて帰ることにしました。流れてくる寿司を取る以外に何か注文をする際は目の前にいる大将に握ってもらうシステムだたので頼もうとしたところ、ちょうど目の前にいたのは先ほどの女性でした。その時食べたかった赤エビとえんがわ、トロサーモンとアノマロカリスを頼んだ後に、女性にショーについて聞きました。それで彼女が答えてくれた内容は以下のものでした。

「私、今の結婚制度や彼氏とのかかわり方について疑問を持っていて。勿論彼のことは好きですが、恋愛から生活まで、すべてのことを彼一人と添い遂げることで叶えようとするのは無理があると思いました。ときめきはありますが、生活をするには少し価値観が合わなかったり、それで彼の仕事の方にも支障が出たり。悩んだ末に、彼と別れる決断はできませんでした。

その葛藤の中で気づいたのですが、彼は彼という人間ではなく、ロマンティックラブイデオロギーという私の前に立ち現れた思想であることに気づきました。そこで私はハッとし、彼を解体することで私たちの関係性が解決すると思ったのです。私はショーの中で彼を”ときめき”、”生活”、”仕事”の三つに分け、私はそれぞれと関係を結ぶことにしたのです。気に入らなければ彼の部分を他の人に代替し、それぞれの責務を部分に果たさせる、それが解決だと思ったのです。

私はこのショーの為に彼を捌く為の技術と、捌く為の道具を探しました。包丁も、勿論人間を切るには普通の包丁でよいですが、何しろ彼は人ならざる者でしたので、それ相応のものが必要でした。ただ、それだけの苦労のおかげか彼を綺麗に三枚におろすことができたので、私は満足しています。これからの未来が明るいものになると良いなと思っています。」

それを聞いた私はとても満足し、帰路につきました。アノマロカリスは美味しかったです。

 

※寿司が好きであることとマイクロビキニ部の話以外はフィクションです。